エンハンスメントはお化粧、トリートメントは整形!惑わされないで!
初めて聞く人はびっくりするかもしれませんが、ルビーやサファイア、アメシストやガーネット、アクアマリン、パライバトルマリンに至るまで、そのほとんどの石はエンハンスメントという処理がされて流通されています。
色をより良くするという加熱処理(エンハンスメント)は、ずいぶん以前から行われてきたことですので一般的な処理としてジュエリー業界では認識されています。しかし、トリートメントという処理を行うとこれは宝石に手を加えたことになり価値が下がってしまいます。今回はそんな加熱処理の種類と違いをサファイアを中心にご紹介します!
通常の加熱処理(エンハンスメント)
エンハンスメントは宝石本来の色を出すための加熱処理でとても一般的です。その方法は、色の良くないサファイヤ(ルビー)をるつぼに入れトーチバーナーで1000度以上で焼くというものです。現在、流通しているコランダム(ルビー、サファイア等)の内、95%以上が加熱処理を施されています。
ベリリウム拡散加熱処理(トリートメント)
トリートメント処理の手法は、従来の加熱処理とほとんど変わりませんが、加熱処理の最終段階である1800度での加熱時、クリソベリル粉末を加えることによって表面の発色を元の色から別の色に変化させることができることです。その中の「桃色~橙色」に変化したサファイアをパパラチアとして流通させたことが、日本でも大きな問題となりました。
宝石のもつ本来の美しさを引き出すための一般加熱処理と違い、その過程で、人為的な操作が行われることから、日本では極端に評価が低くなる傾向があります。
ベリリウム拡散加熱処理後のサファイヤの鑑別
ベリリウム拡散加熱処理は,2001年後半から突如として宝石市場に現れた新しい手法で、『高温下の加熱により外部からベリリウム(Be)を拡散させる処理』です。
この手法が発見されてからはBeが含まれているものはすべてBe処理をしているものと判断されてきました。
しかし、最近の研究結果では、色の分布や他の検査で天然の物だと判断されたサファイアについては、Be含有量の個体差が大きく、部位による濃度差も大きい事がわかりました。また、Beに伴ってブルー系では「ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、トリウム(Th)」等が、イエロー系では「ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)」等が検出されることが多いということが分かってきました。
そのため、サファイアやルビーにBeが検出された際、安直にBe処理された物と判断する事ができなく、Beの含有量や分布状況を詳細にトレースし、他の微量元素に関しても複数箇所の分析を行い、天然起源や二次汚染による混入の可能性も考慮に入れて慎重に判断されるようになっています。鑑別の規定などは、少し小難しい話ではあるのですが、以下の資料を参照してみてください!
では、実際の鑑別書を見てみましょう!
サファイヤの加熱処理の区分
出典:http://www.nihongo.com/
ジェムストーン(=宝石の原石)の種類によってエンハンスメント、トリートメントの区分は異なりますが、サファイアに関しては「色の改善を目的とした加熱が行われている加熱 」以外はトリートメントにあたります。
加熱処置のジュエリーはどれもきれい!
今回は、加熱処理の種類と違いをサファイアを中心にご紹介してきました。いかがでしたか?冒頭でもご紹介した通り簡単に例えて言うと、エンハンスメントがお化粧、トリートメントは整形です。
トリートメントは違う物質をジュエリーの原石に入れているので色は良くても純度が下がり価値が下がってしまうことがあります。ただ、違うものと捉えて購入するならいいかもしれませんね!
ぜひ、加熱処理したジュエリーを検討する際は参考にしてみてください。